「この作業、自動化したほうが絶対いいのに」
現場でそう思いながら、提案書を書けずにいたこと、ありませんか。
正直に告白します。私は何年もそうでした。
改善したい気持ちはある。やるべきこともわかっている。でも、提案書を作るとなると腰が重い。白紙のドキュメントを開いて、何も書けないまま閉じる——そんなことを何度も繰り返していました。
問題は、提案の中身ではなく「書き始められないこと」だったんです。
生成AIを使うようになって、ここが変わりました。今回は、実際にどう作っているのかを、使っているプロンプトと失敗も含めて書きます。
なぜ、提案書は書き始められないのか
先に原因を整理しておきます。
運用改善の提案書が億劫になる理由は、だいたいこの3つです。
1. 構成を考えるのが面倒
何から書けばいいのか。どういう順番なら伝わるのか。ここで止まります。
2. 顧客目線に翻訳するのが難しい
現場としては「この作業が面倒」なんです。でも顧客に「面倒だからやめたい」とは言えない。顧客にとってのメリットに変換する必要があります。この変換作業が、意外と頭を使います。
3. 日常業務に追われて、時間が取れない
そもそも改善提案は「やらなくても怒られない仕事」です。だから、後回しになる。
生成AIが効くのは、主に1と2です。3については、着手のハードルが下がることで結果的に解決しました。
実際の進め方【5ステップ】
ここからが本題です。私が実際にやっている手順を書きます。
題材は、運用保守でよくある「定型作業の自動化提案」を例にします。
ステップ①:材料を箇条書きで書き出す
いきなりAIに投げません。まず、自分の頭にあるものを箇条書きで出します。
- 何が問題なのか
- 誰が、どれくらいの時間をかけているのか
- 自動化するとどうなるのか
- かかるコストはどれくらいか
- リスクは何か
きれいに書く必要はありません。断片的なメモで十分です。ここに10分かければ、あとはAIが形にしてくれます。
むしろ、この段階で整った文章を書こうとすると、また手が止まります。
ステップ②:構成だけを先に作ってもらう
いきなり本文を書かせません。まず構成です。
使っているプロンプト
以下の内容で、顧客向けの運用改善提案書を作ります。
まず構成案(見出しレベル)だけを提示してください。
【提案したいこと】
定型作業の自動化
【現状の課題】
(箇条書きでメモを貼る)
【読み手】
顧客の情報システム部門の担当者
(この担当者は、社内の上長に説明する必要がある)
【提案書の分量】
A4で2〜3ページ程度
ポイントは**「読み手」を具体的に指定すること**です。
特に「担当者は上長に説明する必要がある」という情報を入れると、構成が変わります。担当者が社内で通しやすい流れになるからです。
構成が出てきたら、自分で並べ替えたり、不要な項目を削ったりします。構成さえ決まれば、提案書は8割終わったようなものです。
ステップ③:セクションごとに書かせる
全文を一気に書かせません。セクション単位で作ります。
理由は2つあります。
- 一気に書かせると、内容が浅く広くなる
- 修正したいとき、全部書き直しになる
使っているプロンプト
先ほどの構成のうち、「現状の課題」のセクションを書いてください。
【前提】
(該当箇所のメモを貼る)
【トーン】
批判的にならないよう注意してください。
現場の努力は認めつつ、構造的な課題として書いてください。
【分量】
300字程度
トーンの指定が地味に効きます。
運用改善の提案は、書き方を間違えると「今のやり方が悪い」という批判に読めてしまいます。顧客が今の運用を決めた張本人だった場合、これは致命的です。
ステップ④:顧客目線に変換させる
ここが一番、AIを使ってよかったと感じる部分です。
現場目線で書いた内容を、顧客のメリットに翻訳してもらいます。
使っているプロンプト
以下の内容を、顧客にとってのメリットが伝わる表現に書き換えてください。
【現在の記述】
(現場目線で書いた文章)
【顧客が重視すること】
・コスト
・障害リスクの低減
・自社担当者の負担軽減
作業者側の都合ではなく、顧客の利益として伝わる表現にしてください。
たとえば「手作業が多く、担当者の負担が大きい」という記述は、そのままでは自社の都合です。
これが「手作業に起因するヒューマンエラーのリスクを構造的に低減できる」に変わると、顧客の関心事になります。
内容は同じでも、視点を変えるだけで通りやすさがまったく違う。この変換を、AIは得意としています。
ステップ⑤:反論を想定させる
提出前に、必ずこれをやります。
使っているプロンプト
あなたは顧客の情報システム部門の責任者です。
以下の提案書を読んで、懸念点や質問を挙げてください。
【提案書】
(作った提案書を貼る)
指摘は、重要度の高い順に挙げてください。
役割を設定して読ませると、自分では気づかない穴が見つかります。
よく指摘されるのは、「導入コストの回収期間が示されていない」「移行期間中のリスクが書かれていない」といった点です。
この段階で潰しておくと、提出後のやり取りが激減します。
使ってみてわかった、AIが得意なこと・苦手なこと
正直なところも書いておきます。
得意なこと
- 構成を作る
- 表現を整える、視点を変換する
- 反論を想定する
- 「書き始める」ハードルを下げる
苦手なこと
- 数字を出す(工数、コスト、削減効果は自分で計算する)
- 現場の実情を踏まえた判断
- 顧客との関係性を考慮した表現の匙加減
特に数字は絶対にAIに任せないでください。もっともらしい数字を出してきますが、根拠がありません。提案書の数字は、後で必ず問われます。
そして、この線引きこそが一番重要です。AIは提案書を「書く」ツールであって、「考える」のは自分です。
失敗したこと
最初のころ、うまくいかなかったことも書いておきます。
1. 全部を一度に書かせようとした
「運用改善の提案書を作って」だけで投げた結果、一般論の塊が出てきました。どこの現場でも通用するような、中身のない文章です。
情報を細かく渡さないと、AIは一般論しか返せません。当たり前ですが、最初は気づきませんでした。
2. 出てきた文章をそのまま使おうとした
きれいな文章が出てくるので、つい「これでいいか」と思ってしまう。
でも読み返すと、自分の言葉になっていない。顧客との打ち合わせで質問されたとき、自分で説明できないんです。
AIが作ったものは、必ず自分の言葉に直す。これは今も守っています。
3. 顧客情報をそのまま入力しそうになった
これは実際にはやっていませんが、危なかった場面はあります。
顧客名、システム名、ホスト名——これらは伏せ字や汎用名に置き換えてから使います。提案書の下書きは特に、具体的な情報が入りやすいので注意が必要です。
何が一番変わったか
技術的な話ではなく、正直な実感を書きます。
一番変わったのは、提案そのものの本数が増えたことです。
以前は「提案書を書くのが面倒だから、今回はやめておこう」と諦めていた改善が、いくつもありました。書けるようになったことで、そういう取りこぼしが減りました。
改善提案は、通れば顧客にも自分たちにもメリットがあります。でも、書かなければゼロです。
AIの一番の価値は、質を上げることより、着手できるようにすることだったかもしれません。
まとめ
生成AIで運用改善の提案書を作る手順をまとめます。
5ステップ
- 材料を箇条書きで書き出す — きれいに書かなくていい
- 構成だけを先に作らせる — 読み手を具体的に指定する
- セクションごとに書かせる — 一気に書かせない
- 顧客目線に変換させる — 現場の都合を顧客の利益に翻訳
- 反論を想定させる — 役割を設定して読ませる
気をつけること
- 数字はAIに任せない(工数・コスト・効果は自分で計算)
- 出てきた文章は、必ず自分の言葉に直す
- 顧客情報・機密情報は入力しない
提案書が書けずに止まっている改善案、思い当たるものはありませんか。
もしあるなら、まずは箇条書きのメモを作るところから試してみてください。そこから先は、思っているより早く進みますよ。


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