「これ、わかりますか?」
一日に何度も、この言葉をかけられます。
チャットが飛んできて、席に人が来て、電話が鳴る。そのたびに手を止めて、状況を聞いて、答える。
頼られるのは、ありがたいことです。
わかっています。信頼されているということだし、自分の経験が役に立っているということでもある。
でも、正直に告白します。
ある時期、私はそれに疲れていました。
今回は、「詳しい人」でいることのしんどさについて書きます。誰かに言うほどのことでもないけれど、確かにあった感情です。
何がしんどかったのか
具体的に書くと、こういうことです。
①自分の作業が進まない
朝、今日やることを決めて席につく。
でも、30分に一度は質問が来ます。答えるのは5分でも、そのたびに集中が切れる。気づくと夕方で、自分の作業は何も進んでいない。
「じゃあ後でまとめて答えます」と言えばいいのですが、相手は今困っている。そう思うと、後回しにできませんでした。
②同じ質問が何度も来る
前にも答えたことを、また聞かれる。
一度説明したはずなのに。手順書にも書いたはずなのに。
イラッとする自分に気づいて、そう感じてしまう自分が嫌になる。これも地味にしんどい部分でした。
③「聞けば済む」状態を作っているのは自分だった
これが一番こたえました。
質問に丁寧に答えるほど、相手は調べなくなります。 聞いたほうが早いからです。
つまり、私が親切に答え続けたことで、「聞けば済む」環境を自分で作っていた。疲れの原因は、自分の対応にあったわけです。
それでも断れなかった理由
「忙しいから後にして」と言えばよかったのかもしれません。
でも、言えませんでした。理由は3つあります。
1. 役に立ちたい気持ちがあった
純粋に、困っている人を助けたい。この気持ちは本物です。
2. 頼られなくなるのが怖かった
矛盾しているようですが、これもありました。
質問されなくなったら、自分の価値がなくなる気がした。疲れているのに、頼られたい。 厄介な感情です。
3. 冷たい人だと思われたくなかった
これは、メンバーに厳しく言えなかったのと同じ根っこです。嫌われたくない、という気持ち。
考え方が変わったきっかけ
転機は、休みを取ったときでした。
数日休んで戻ってきたら、チームは普通に回っていました。
もちろん、いくつか判断が保留になっていたものはあります。でも、致命的なことは何も起きていなかった。
そのとき思ったんです。
「聞かれなければ、みんな自分で調べるんだ」
私がいることで、むしろ成長の機会を奪っていたのかもしれない。
そう考えると、少し気が楽になりました。
変えたこと
すぐに断れるようになったわけではありません。今も相談は来ます。
でも、対応の仕方を変えました。
①すぐに答えを言わない
「どこまで調べた?」と先に聞くようにしました。
答えを渡すのではなく、調べ方を渡す。 最初は時間がかかりますが、2回目からは自分で解決できるようになります。
ただし、緊急時は別です。障害対応中に「まず自分で調べて」は言いません。平常時と緊急時で、対応を分けるようにしました。
②同じ質問が2回来たら、ドキュメントにする
その場で答えて終わりにせず、記録に残す。
「ここに書いておいたから、次からはこれを見て」と言えるようにしておくと、3回目が来なくなります。
これは属人化を崩す作業でもあります。
③質問を受ける時間帯を決めた
常時オープンにするのをやめました。
午前中は自分の作業に集中し、質問は午後にまとめて受ける。緊急のものは別ですが、それ以外は「あとで見ます」と伝える。
全部に即応しない。 これだけで、消耗がかなり減りました。
「詳しい人」をやめたわけではない
誤解のないように書いておくと、知識を出し惜しみするようになったわけではありません。
聞かれれば答えます。教えることも好きです。
変わったのは、自分が消耗しない形で関わるようになったということです。
そして気づいたのは、すべてに即応することが親切ではないということ。
- すぐ答える → 相手は楽だが、成長しない
- 調べ方を渡す → 最初は手間だが、次から自立する
どちらが本当に相手のためか。 考えると、答えは明らかでした。
同じように疲れている人へ
もし今、「詳しい人」でいることに疲れている人がいたら。
その疲れは、真面目にやってきた証拠です。
適当に答えていたら、質問は来ません。丁寧に答えてきたから、頼られる。だから疲れる。順番としては、そうなります。
そのうえで、伝えたいことが2つあります。
1. あなたがいなくても、たぶん回ります
これは冷たい話ではありません。休んでいいということです。
自分がいないと回らないと思い込むのは、しんどいだけでなく、組織にとってもリスクです。
2. 全部に即応しなくていい
緊急でなければ、後回しにしていい。「あとで見ます」と言っていい。
即応しないことは、冷たさではありません。 自分の時間を守ることも、仕事のうちです。
まとめ
「詳しい人」でいることに疲れた話をまとめます。
何がしんどかったか
- 自分の作業が進まない
- 同じ質問が何度も来る
- 「聞けば済む」状態を作っているのは自分だった
断れなかった理由
- 役に立ちたい気持ちがあった
- 頼られなくなるのが怖かった
- 冷たい人だと思われたくなかった
変えたこと
- すぐに答えを言わず、調べ方を渡す(緊急時は除く)
- 同じ質問が2回来たら、ドキュメントにする
- 質問を受ける時間帯を決めた
同じように疲れている人へ
- その疲れは、真面目にやってきた証拠
- あなたがいなくても、たぶん回る
- 全部に即応しなくていい
頼られることは、悪いことではありません。
でも、それで自分がすり減っていくなら、関わり方を変えたほうがいいと思っています。
私もまだ、うまくできているとは言えません。今日も何度か、つい即答してしまいました。
でも、少しずつでいいと思っています。


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