「手順書を作ったのに、誰も見てくれない」 「手順書があるのに、結局ベテランに聞いている」
運用保守の現場で、こういう状況はよくあります。
せっかく時間をかけて手順書を作っても、使われなければ意味がありません。そして、使われない手順書は、どんどん古くなって、さらに使われなくなる——悪循環に陥ります。
私は19年の運用保守の中で、たくさんの手順書を作り、そして「使われる手順書」の書き方を模索してきました。
今回は、運用手順書を「使われる手順書」にするための書き方を、具体的に解説します。
なぜ手順書は「使われない」のか
まず、なぜ手順書が使われないのかを整理します。
1. わかりにくい
書いてある内容が曖昧だったり、専門用語だらけだったり。読んでも理解できない手順書は、使われません。
2. 古い
内容が更新されておらず、実際の手順と食い違っている。「手順書通りにやったのに、うまくいかない」となると、信頼を失い、使われなくなります。
3. 探せない
手順書がどこにあるかわからない。必要なときにすぐ見つけられない手順書は、使われません。
4. そもそも作業者目線でない
作った人の目線で書かれていて、実際に作業する人の目線になっていない。これも使われない大きな原因です。
これらを解消することが、「使われる手順書」への道です。
使われる手順書の書き方①:「誰が読んでも同じ結果になる」を目指す
手順書の基本は、**「誰が読んでも同じ結果になる」**ことです。
ベテランが読んでも、新人が読んでも、同じように作業できる。これが理想の手順書です。
そのために意識すべきことは——
具体的に書く
「サーバーを確認する」ではなく、「サーバーAにSSHでログインし、df -hコマンドでディスク使用量を確認する」のように、具体的に書きます。
曖昧な表現を避ける
「適宜」「必要に応じて」「基本的に」——こういう曖昧な表現は、人によって解釈が分かれます。できるだけ具体的な基準を書きましょう。
前提条件を明記する
「この作業を始める前に、〇〇が完了していること」など、前提条件を明記します。前提が抜けていると、作業者が戸惑います。
使われる手順書の書き方②:スクリーンショットや図を入れる
文字だけの手順書は、わかりにくい。スクリーンショットや図を入れると、格段にわかりやすくなります。
- 操作する画面のスクリーンショット
- どこをクリックするかを示した矢印や囲み
- システム構成を示した図
「百聞は一見にしかず」です。特に、GUI操作を伴う手順は、スクリーンショットがあるだけで、理解しやすさが大きく変わります。
作るのは少し手間ですが、その手間が、後で「使われる手順書」につながります。
使われる手順書の書き方③:「作業者目線」で書く
手順書は、実際に作業する人の目線で書くことが大切です。
作った人は、その作業に詳しいので、つい説明を省略しがちです。でも、初めてその作業をする人には、その省略が「わからない」原因になります。
作業者目線で書くコツ
- 「これくらいわかるだろう」を省略しない
- 作業の途中で迷いそうなポイントを、先回りして説明する
- 「うまくいかないとき、どうするか」も書いておく
私が意識しているのは、「その作業を初めてやる人が、この手順書だけで完遂できるか」という視点です。この視点で見直すと、説明の抜けが見つかります。
使われる手順書の書き方④:「なぜ」を書く
手順だけでなく、**「なぜその作業をするのか」**を書くと、手順書の価値が上がります。
「なぜ」がわかると、作業者は理解して作業できます。理解して作業できると、イレギュラーが起きたときにも対応できる。
たとえば——
「サービスを停止する(※この作業中にアクセスがあると、データ不整合が起きるため)」
このように「なぜ」を添えると、作業者は「なるほど、だから停止するのか」と理解できます。単なる手順の丸暗記ではなく、理解した上で作業できるようになります。
使われる手順書の書き方⑤:更新しやすくしておく
手順書が使われなくなる大きな原因が、「古くなること」です。だから、更新しやすくしておくことが重要です。
更新しやすくするコツ
- 更新日と更新者を記録する欄を作る
- 「気づいた人が、すぐ直せる」仕組みにする(編集権限を絞りすぎない)
- 定期的に見直すタイミングを決めておく
私のチームでは、「手順書に誤りや古い箇所を見つけたら、気づいた人がその場で直す」というルールにしています。「誰かが直すだろう」ではなく、「気づいた人が直す」。これで、手順書が古くなるのを防げます。
手順書は「作って終わり」ではない
最後に、大切なことを伝えます。
手順書は、「作って終わり」ではありません。
- 使われて、フィードバックを受けて、改善する
- 実際の手順が変わったら、更新する
- 新しい作業が増えたら、手順書を追加する
手順書は、生き物のように、育てていくものです。作った後も、使いながら改善し続けることで、本当に「使われる手順書」になっていきます。
そして、いい手順書は、属人化を防ぎ、引き継ぎを楽にし、チーム全体の作業品質を上げてくれます。手間をかける価値は、十分にあります。
まとめ
運用手順書を「使われる手順書」にする書き方をまとめます。
- 「誰が読んでも同じ結果になる」を目指す(具体的に、曖昧さを避ける)
- スクリーンショットや図を入れる(視覚的にわかりやすく)
- 「作業者目線」で書く(省略しない、迷うポイントを先回り)
- 「なぜ」を書く(理解して作業できるように)
- 更新しやすくしておく(古くならない仕組み)
そして、手順書は「作って終わり」ではなく、使いながら育てていくもの。
いい手順書は、チーム全体を支える財産になります。ぜひ、「使われる手順書」を目指してみてください。


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