「言った言わない」を防ぐ、運用保守の記録術

仕事・現場リアル

「え、そんなこと言いましたっけ?」 「いや、確かにお伝えしましたよ」

運用保守の現場で、こういう「言った言わない」のトラブル、経験したことはありませんか。

顧客との約束、ベンダとのやり取り、チーム内の指示——。口頭でのやり取りは、後になって「言った」「聞いていない」の食い違いを生みます。

これは、信頼関係を損なうだけでなく、実際のトラブルにもつながる厄介な問題です。

19年の運用保守の中で、私はこの「言った言わない」を防ぐための記録術を磨いてきました。今回は、その具体的な方法を紹介します。


なぜ「言った言わない」が起きるのか

まず、なぜ「言った言わない」が起きるのかを整理します。

1. 口頭だけでやり取りしている

電話や対面での会話は、記録が残りません。「確かに言った」と思っていても、証拠がなければ水掛け論になります。

2. 人の記憶は曖昧

人の記憶は、驚くほど当てになりません。悪意がなくても、「言った」「聞いていない」の食い違いは自然に起きます。時間が経つほど、記憶はさらに曖昧になります。

3. 認識のズレ

同じ会話をしていても、受け取り方が違うことがあります。「検討します」を「やってくれる」と受け取る人もいれば、「保留」と受け取る人もいる。認識のズレが、後のトラブルになります。

これらを防ぐ鍵が、「記録」です。


記録術①:口頭のやり取りは、必ず文字に残す

最も基本的で、最も重要なのがこれです。

口頭でのやり取りは、必ず文字に残す。

電話で話した内容、対面で決めたこと、廊下で交わした約束——。口頭で済ませたことは、後から必ず文字で記録します。

私が実践しているのは、こういう方法です。

  • 電話の後、内容をメールやチャットで「先ほどのお電話の件、〇〇ということで承知しました」と送る
  • 打ち合わせの後、議事録を作って関係者に共有する
  • 口頭で受けた依頼は、チケットやタスク管理ツールに記録する

「言った」証拠を残すのではなく、「認識を合わせる」ために記録する。この意識が大切です。


記録術②:「確認」の形で残す

記録するとき、ただ書き残すだけでなく、「確認」の形にするとさらに効果的です。

たとえば、口頭で受けた依頼を、こう返す。

「先ほどご依頼いただいた件、以下の認識で進めますが、よろしいでしょうか。 ・作業内容:〇〇 ・期限:〇月〇日 ・注意点:〇〇 問題なければ、この内容で進めます」

こうすると、相手が「はい」と返せば、それが合意の証拠になります。認識のズレも、この段階で発見できます。

「言った言わない」を防ぐだけでなく、認識のズレによるトラブルも未然に防げる。一石二鳥の方法です。


記録術③:日付・時刻・相手を明記する

記録には、**「いつ」「誰と」「何を」**を明記します。

「〇月〇日 14:00 A社田中様と電話。△△について合意」

このように、日付・時刻・相手を記録しておくと、後から振り返ったときに正確に状況を再現できます。

特に障害対応や重要な意思決定は、時系列で記録しておくことが重要です。「いつ、誰が、何を判断したか」が明確になっていると、後のトラブルや監査のときに、大きな助けになります。


記録術④:「決定事項」と「保留事項」を分ける

記録するとき、「決まったこと」と「決まっていないこと」を明確に分けることが大切です。

打ち合わせでよくあるのが、「なんとなく話したけど、決まっていない」ことを、片方が「決まった」と認識してしまうケース。

だから、記録では——

  • 決定事項:〇〇することが決定
  • 保留事項:△△については次回までに検討
  • ToDo:誰が、何を、いつまでに

このように明確に分けます。「決まったこと」と「決まっていないこと」の区別がつくと、認識のズレが大きく減ります。


記録術⑤:記録を「共有」する

記録は、自分だけが持っていても意味がありません。関係者と共有して、初めて効果を発揮します。

議事録を作ったら、参加者全員に送る。決定事項は、関係者がアクセスできる場所に残す。チーム内の指示は、みんなが見えるチャットに書く。

共有することで、こんなメリットがあります。

  • 全員が同じ認識を持てる
  • 「聞いていない」がなくなる
  • 記録に間違いがあれば、誰かが指摘してくれる

記録は「残す」だけでなく「共有する」までがセットです。


記録は「守り」であり「信頼」でもある

「言った言わない」を防ぐ記録術と聞くと、「自分を守るため」の防御的な印象を持つかもしれません。

確かに、記録は自分を守ってくれます。でも、それだけではありません。

丁寧に記録し、認識を合わせることは、相手との信頼関係を築くことでもあります。

「この人は、いつもちゃんと記録して、認識を合わせてくれる」——そう思われると、顧客もベンダも安心して仕事を任せられます。

記録術は、トラブルを防ぐ「守り」であると同時に、信頼を積み上げる「攻め」でもある。私はそう考えています。


まとめ

「言った言わない」を防ぐ、運用保守の記録術をまとめます。

  1. 口頭のやり取りは、必ず文字に残す
  2. 「確認」の形で残す → 認識のズレも防げる
  3. 日付・時刻・相手を明記する
  4. 「決定事項」と「保留事項」を分ける
  5. 記録を「共有」する

「言った言わない」は、記録の習慣で防げます。

そして、丁寧な記録は、トラブルを防ぐだけでなく、相手との信頼関係も築いてくれます。

「最近、認識の食い違いが多いな」と感じている方は、まず「口頭のやり取りを文字に残す」ことから始めてみてください。

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