明らかに、自分より技術力がある人が入ってきた。
そう感じたことは、ありませんか。
正直に告白します。私はあります。そして、そのとき最初に湧いてきた感情は、歓迎ではありませんでした。
「この人がいれば、チームは強くなる」
頭ではそう思っていました。でも、その下にもう一つ、認めたくない感情があった。
焦りです。
あるいは、もっと直接的に言えば——自分の立場が危うくなる気がした。
情けない話です。でも、そう感じてしまった。今回は、あのときのことと、そこからどう折り合いをつけたのかを書きます。
何が焦りだったのか
最初は、自分でも何に焦っているのかわかりませんでした。
整理してみると、3つあったと思います。
1. 技術で勝てないとわかった
その人は、クラウドの知識が明らかに私より上でした。設計の考え方も、手を動かす速さも。
「自分はこの人に技術で教えられることがない」
そう気づいた瞬間、足元が崩れる感じがありました。それまで、技術で信頼を得てきたつもりだったからです。
2. リーダーである理由がわからなくなった
技術で勝てないなら、なぜ自分がリーダーなのか。
年数が長いから。それだけの理由でこのポジションにいるとしたら、それは実力ではなく順番の問題です。
そう考えると、自分の存在が急に頼りなく思えました。
3. 比較されるのが怖かった
チームの中で、誰かが自分と彼を比べるかもしれない。
「こいきんぐさんより、あの人のほうが詳しいよね」
実際に言われたわけではありません。でも、言われるかもしれないという想像だけで、しんどかった。
最初にやってしまった、よくない対応
正直に書きます。あのころ、私は無意識にこういう行動を取っていました。
その人の意見に、すぐ乗らなかった
新しい提案が出てきたとき、内心では「たしかにそのほうがいい」と思っていても、素直に賛成できなかった。
「一理あるけど、うちの環境だと難しいかも」
こういう言い方で、いったん保留にする。今思えば、自分の面子を守っていただけです。
自分の得意な話に持っていった
技術の話で分が悪くなると、顧客対応や過去の経緯の話に切り替える。
「その顧客は昔こういう経緯があってね」
嘘は言っていません。でも、自分が優位に立てる土俵に引き戻していたのは事実です。
評価を少し辛くつけそうになった
これが一番よくなかった。
明確に不当な評価をしたわけではありません。でも、素直に「素晴らしい」と書けなかった瞬間があった。
この時期の自分を思い出すと、恥ずかしくなります。
考えが変わったきっかけ
転機は、些細なことでした。
あるとき、その人が担当していた案件で、顧客とのやり取りがこじれかけたんです。
技術的には正しい提案をしていた。でも、顧客の担当者が納得していなかった。
私が間に入って、経緯を整理して、伝え方を変えて、話をまとめました。
そのあと、彼にこう言われたんです。
「ああいう場面、自分にはまだできないです」
そのとき、初めて気づきました。
自分にしかできないことは、ちゃんとあった。
技術力で並ぼうとしていたから見えなかっただけで、役割が違うだけだったんです。
リーダーの仕事は、技術で一番になることじゃない
考えを整理すると、こうでした。
私がやるべきことは、チーム全体で成果を出すことです。
そのために必要なのは:
- 誰に何を任せるか判断すること
- 顧客との関係を作ること
- メンバーが動きやすい環境を整えること
- 責任を引き受けること
技術で一番であることは、リストに入っていません。
むしろ、自分より優秀な人がいるなら、その人の力を最大限に発揮させるのがリーダーの仕事です。
当たり前のことを書いていますが、当時の私にはこれが見えていませんでした。
「自分が一番できなければ、リーダーとして認められない」と思い込んでいたんです。
態度を変えてから、起きたこと
考え方を変えてから、意識的にやったことがあります。
1. わからないことを、素直に聞くようにした
「その設計、なぜそうしたのか教えてほしい」
年下でも、経験が浅くても、知らないことは聞く。プライドを捨てるというより、知りたいから聞くという自然な形に戻しました。
2. 得意な領域を、はっきり任せた
「クラウド周りは、基本的にお願いしたい。判断に迷ったら相談して」
任せる範囲を明確にすると、本人も動きやすくなります。 そして、こちらも余計な口を出さなくて済みます。
3. 自分の役割を、言葉にした
「自分は技術では並べないけど、顧客との調整と、チーム全体の判断は責任持つ」
これをチームに向けて言えるようになったとき、自分の中の焦りが一段落ちました。
役割を宣言すると、比較の土俵から降りられます。
結果として、どうなったか
その人は今も一緒に働いています。
チームの中でクラウド領域を引っ張ってくれていて、私より確実に詳しい。若手からも頼られています。
そして、彼がいることでチームの提案力は明らかに上がりました。
もし私があのまま面子を守り続けていたら、彼は力を発揮できず、たぶん辞めていたと思います。優秀な人ほど、抑えつけられると離れていく。
あのとき、態度を変えられてよかった。心からそう思います。
同じ状況にいる人へ
もし今、自分より優秀な部下が来て、モヤモヤしている人がいたら。
その感情自体は、悪いものではありません。
焦るのは、真剣にやってきたからです。どうでもいいと思っていたら、焦りもしません。
ただ、その感情をどう扱うかが分かれ道になります。
面子を守る方向に使うと、チームも自分も損をします。
代わりに、こう考えてみてください。
- 技術で並ぶ必要は、そもそもない
- 自分にしかできないことは、必ずある
- その人の力を引き出せたら、それは自分の成果でもある
優秀な人を活かせるリーダーは、その人以上に価値があります。
これは強がりではなく、実感です。
まとめ
自分より優秀な部下が来たときのことを、まとめます。
最初に感じた焦りの正体
- 技術で勝てないとわかった
- リーダーである理由がわからなくなった
- 比較されるのが怖かった
やってしまったよくない対応
- 相手の意見にすぐ乗らなかった
- 自分の得意な話に持っていった
- 評価を辛くつけそうになった
考えが変わったきっかけ
自分にしかできないことが、ちゃんとあると気づいた
態度を変えてからやったこと
- わからないことを素直に聞く
- 得意な領域をはっきり任せる
- 自分の役割を言葉にする
自分より優秀な人がチームに来るのは、本当はありがたいことです。
そう思えるまでに、私は少し時間がかかりました。でも、思えるようになってからのほうが、仕事は確実に楽しくなりましたよ。


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