「運用保守の仕事に、やりがいはありますか」
面接で聞かれることがあります。転職を考えている人から相談されることもあります。
正直に告白します。この質問に、私は長いこと答えられませんでした。
「やりがい」という言葉が、しっくりこなかったんです。
障害を防いでも誰も気づかない。同じ作業を毎日繰り返す。成果は数字になりにくい。そういう仕事に「やりがい」という言葉を当てはめようとすると、どこか嘘くさくなる気がしていました。
でも19年続けてきて、今なら少し違う言い方ができます。
今回は、運用保守のやりがいについて、きれいごと抜きで書きます。
「やりがい」を求めると、たぶん苦しくなる
先に、身も蓋もないことを書きます。
運用保守に、わかりやすいやりがいを期待すると、しんどいです。
開発なら「作ったものが動いた」という達成感があります。営業なら数字が出る。企画なら形が残る。
でも運用保守は違います。
- うまくいっても、何も起きない
- 頑張って障害を防いでも、防いだことは見えない
- 完璧に作業しても「当たり前」
成果が「何も起きなかったこと」なんです。 これを達成感に変換するのは、正直難しい。
だから、「やりがいのある仕事がしたい」という動機で入ると、ギャップに苦しみます。
ここは、最初に正直に言っておきたい部分です。
それでも19年続いた理由
では、なぜ続いているのか。
やりがいという言葉ではうまく説明できないのですが、確かに手応えを感じる瞬間はあります。
私の場合、こういう瞬間でした。
①障害を「防げた」と自分だけが知っている瞬間
監視のしきい値を調整していたら、ディスク枯渇の予兆を捕まえた。対処して、何事もなく終わった。
誰も気づきません。顧客も、上司も、同僚も。
でも自分は知っている。あのとき対処していなければ、深夜に叩き起こされて、顧客の業務が止まっていた。
この「自分だけが知っている達成感」は、地味ですが確かにあります。誰かに褒められる種類のものではありませんが、それでいいと思えるようになりました。
②長く担当した環境が、安定していく瞬間
新しく引き継いだ環境は、たいてい荒れています。
アラートが鳴りっぱなし、手順書がない、属人化している。それを少しずつ整えていく。
半年、一年と経つうちに、明らかに静かになっていく。
去年は毎週何かあったのに、今年は月に一度あるかないか。この変化は、数字にも出るし、実感としてもわかります。
自分が触った環境が、良くなっていく。 これは運用保守ならではの手応えだと思います。
③「あなたに任せておけば安心」と言われる瞬間
滅多にありません。でも、たまにあります。
顧客から「この件、お任せします」と言われたとき。長く担当してきて、信頼が積み重なったときにだけ出てくる言葉です。
派手ではないけれど、これは効きます。
技術力を褒められるより、「任せられる」と言われるほうが、この仕事では嬉しい。そう感じるようになりました。
やりがいより「向き不向き」で考えたほうがいい
ここまで書いてきて思うのは、運用保守は「やりがい」より「向いているか」で考えたほうが幸せだということです。
向いている人には、こういう傾向があります。
1. 何も起きないことに価値を感じられる
「今日も平和だった」を成果として受け取れるか。ここが一番大きい分岐点です。
2. 地道な改善が苦にならない
一気に何かを変えるより、少しずつ良くしていくのが性に合っているか。
3. 目立たなくても気にならない
スポットライトが当たらないことに、耐えられるか。むしろ気楽だと感じるか。
4. 責任を引き受けられる
止めてはいけないシステムを預かる。この重さを、プレッシャーではなく責任として受け止められるか。
この4つに当てはまるなら、やりがいを探さなくても続きます。
逆に、目立ちたい、新しいものを作りたい、成果を認められたい——そういう欲求が強い人には、正直しんどい仕事です。それは悪いことではなく、単に向いている場所が違うだけです。
面接で「やりがい」を聞かれたら
転職や就職の面接で、この質問はよく出ます。
そのとき、無理にきれいな答えを作らなくていいと思っています。
避けたい答え
「トラブルを解決したときの達成感にやりがいを感じます」
悪くはないのですが、経験者が聞くと少し引っかかります。障害対応は、やりがいより先にプレッシャーが来るからです。実態を知らないように聞こえます。
伝わる答え
「派手な成果が出る仕事ではないと理解しています。ただ、止まらない状態を維持することに価値があると考えていて、そこを地道に積み重ねられる仕事だと思っています」
わかったうえで選んでいるということが伝わると、面接官の受け取り方が変わります。
志望動機の作り方については別記事に書いたので、あわせて読んでみてください。
19年やってきて、今思うこと
最後に、正直な実感を書きます。
やりがいは、後からついてきました。
最初からあったわけではありません。20代のころは、この仕事に意味を見出せずにいた時期もあります。「代わりはいくらでもいる」と言われて、悔しい思いもしました。
でも続けているうちに、少しずつ変わりました。
- 任される範囲が広がった
- 判断できることが増えた
- 「この人に聞けばわかる」と言われるようになった
- チームを預かるようになった
やりがいを求めて動いたわけではなく、続けた結果として手応えが出てきた。 そういう順番でした。
だから、今この仕事に「やりがいがない」と感じている人がいたら、こう伝えたいです。
まだ、その段階じゃないだけかもしれません。
もちろん、本当に合わないなら環境を変えるべきです。でも、「やりがいを感じないから辞める」と決める前に、もう少しだけ続けてみる価値はあると思っています。
まとめ
運用保守のやりがいについて、まとめます。
先に言っておきたいこと
- わかりやすいやりがいを期待すると、しんどい
- 成果が「何も起きなかったこと」だから
それでも感じる手応え
- 障害を防げたと、自分だけが知っている瞬間
- 長く担当した環境が、安定していく瞬間
- 「あなたに任せておけば安心」と言われる瞬間
やりがいより向き不向きで考える
- 何も起きないことに価値を感じられるか
- 地道な改善が苦にならないか
- 目立たなくても気にならないか
- 責任を引き受けられるか
面接で聞かれたら
無理にきれいな答えを作らず、実態を理解したうえで選んでいることを伝える
運用保守は、やりがいを声高に語る仕事ではありません。
でも、続けた人にしかわからない手応えは、確かにあります。
派手さはないけれど、そんなに悪くない仕事ですよ。


コメント